
骨粗しょう症
骨粗しょう症
骨密度は50歳ごろから低下し始めます。我が国では1300万人が骨粗しょう症を罹患していますが、実際に治療を受けている方は20%程度のみです。高齢者の骨折は必ず、その後の生活の質を落とすため骨粗しょう症の診断と、治療がとても重要です。
当院で採用している骨密度測定器は、低被曝でありながら骨密度の変化の検出度が高く、腰椎、大腿骨の骨粗しょう症の診断や骨折リスクを得ることが可能です。また、定期的に検査を行うことで治療効果の判定をします。また、骨代謝に関わる血液検査も行うことで、一人ひとりに最適な骨粗しょう症治療を提案することができます。
老化などが原因となって骨の量が減少し、枯れ木のように骨がもろくなって骨折リスクが高くなってしまう疾患です。骨に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量(骨密度)は、20〜30歳頃をピークに、歳を重ねるとともに減少し続けていきます。
この骨密度が一定の数値を下回ると骨粗しょう症といわれる状態になり、背骨が身体の重みでつぶれたりする脊椎圧迫骨折や、ちょっとした転倒で大腿骨や、上腕骨、手首を骨折するといった事態を引き起こしやすくなります。
骨粗しょう症は、高齢の女性を中心に年々増加の一途をたどります。骨粗しょう症は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する更年期以降に多くみられるようになります。エストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨が分解される骨吸収の過程を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。
閉経して、このエストロゲンの分泌量が減少すると、骨吸収のスピードが速まるため、新しく骨を作る骨形成のスピードが追いつかず、結果的に骨がもろくなってしまいます。そのため、閉経を迎える50歳前後から骨量は急激に減少し始めます。60歳を迎える頃に一度は骨粗しょう症の精密検査を受けるようお勧めいたします。(背骨や大腿骨の骨折を経験したような肉親や親戚がいる方はさらに早く検査を受けることをお勧めします。)
一方では、関節リウマチ、糖尿病、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒なども骨粗しょう症の原因と考えられており、最近は高齢の女性だけでなく、若い女性の骨粗しょう症も問題視されています。
骨粗しょう症の診断には、骨密度の測定、X線検査、身長測定、血液・尿検査などが行われます。
骨密度の測定
骨の強さを測定する際の重要な尺度の1つに「骨密度」があります。
当院では最新の骨密度測定装置を導入し、この検査機器による腰椎と大腿骨の骨密度の測定(DXA法)を行っております。6ヶ月~1年に1度のDXA法による大腿骨、腰椎の検査をお勧めいたします。
X線検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のエックス線写真を撮り、骨折や変形がないか、また「骨粗しょう症」の有無(骨に鬆が入ったようにスカスカになっていないか)を確認します。
骨粗しょう症と他の疾患とを判別するのに必要な検査です。
身長測定
25歳の頃の身長と比べて、どのくらい縮んでいるかを調べます。
25歳時より4cm以上低くなっている場合は、それほど低くなっていない人と比べ、骨折する危険性が2.8倍高いという報告があります。定期的な身長測定は骨粗しょう症による背骨の骨折を発見する大切な検査です。
血液検査・尿検査
骨代謝マーカーを調べることにより、骨の新陳代謝の特徴がわかります。
骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値にかかわらず骨折の危険性が高くなっています。また、最近では骨の質を測定することも大切になってきました。
骨粗しょう症の原因のうち、年齢や性別遺伝的な体質などは変えることができません。しかし、変えることのできる要素、つまり食生活や運動などの生活習慣を見直すことにより予防が可能です。
骨粗しょう症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやタンパク質、および骨のリモデリングに必要なビタミンD、Kなどです。カルシウムは食品として700〜800mg/日、ビタミンDは400〜800IU/日、ビタミンKは250〜300μg/日を摂取することが推奨されています。
これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。
骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、カフェイン、アルコールなどの摂りすぎには注意しましょう。過ぎた量のアルコールは、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からカルシウムの排泄量を増やしたりします。カフェインもまた、カルシウムの排泄を促します。
カルシウム | 牛乳、チーズ、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわしの丸干し、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤ など |
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タンパク質 | 肉類、魚類、卵、乳製品、大豆 など |
ビタミンD | 鮭、しらす干し、いわし、カツオ、卵黄、すじこ、さば、マグロ、きくらげ、煮干し、干し椎茸、あんこうの肝 など |
ビタミンK | 納豆、鶏肉、ツナ缶、モロヘイヤ、春菊、小松菜、ほうれん草 など |
骨は運動をして負荷をかけることで、骨を作る細胞(骨芽細胞)を活性化させます。この結果、骨密度が維持または向上することが報告されています。特に、荷重運動(ウォーキングやジョギングなど)や筋力トレーニングは、骨密度を増加させる効果が高いとされています。
散歩などの運動を、可能なら毎日、あるいは週に数回でも有効ですので、長く続けてください。現在の運動量を少しでも増やそうとする心がけが大切です。運動をしない生活はバランス感覚を悪くし、転倒しやすくなり、骨折にもつながるため、運動療法は骨粗しょう症の予防、治療には欠かせません。
症状が進んだケースでは、薬物療法を開始します。現在使われている薬には、骨の分解を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成(新しい骨を作る)を助ける「骨形成促進剤」、骨の栄養素である各種ビタミン(D、K)剤などがあります。
どの薬を選び、いつから治療を開始するかについては、個々の患者さまの年齢や症状の進み具合などを考え合わせながらご提案します。
現在、治療に用いられている薬には、主に以下のようなものがあります。
骨吸収を抑制することによって、骨密度を増やします。骨粗しょう症の治療薬の中でも歴史があり、有効性の高い薬です。ビスフォスフォネートは腸で吸収され、すぐに骨に届きます。そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制するのです。骨吸収が緩やかになると、骨形成が追いついて、密度の高い骨が出来上がります。
骨に対しては女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり(ホルモンではありません。)また、心血管疾患や乳癌発症抑制効果も示されており、閉経後女性の統合的治療として期待できます。
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。
専用キットを用いて家で自己注射する薬や、医療機関で定期的に注射する薬などがあります。複数箇所の骨折が起こっている、骨密度が著しく減少しているなど、重症の患者さまに対して用いられます。
カルシウムの腸管からの吸収を増やす働きがあります。また、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。腎臓のはたらきが悪い人には量を調整しながら安全に使用していくことが大切な薬剤です。
ビタミンK2は骨芽細胞に作用することで骨形成を促し、同時に骨吸収を抑制することで、骨の質を改善します。骨折を起こさないしなやかの骨強度を高める効果が認められています。
骨吸収を抑制する作用があり、骨の鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症に伴う背中や腰の痛みに用いられます。
破骨細胞は、骨芽細胞と結合することによって骨を壊す細胞になります。
この結合する部分(RANKL)をブロックすれば、結合することができなくなるため、骨は壊れなくなります。このようにして骨が溶け出していく過程が遮断され、骨粗しょう症を治療することができると考えられています。
なお、この薬の特徴は、6ヶ月に1回の皮下注射で済む点です(6ヶ月製剤)。
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